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3話 滲む寂しさと、隠された本心

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-08-27 02:21:38

 サークル友達からの飲み会の誘いだった。ユウマは、ヒナに申し訳ないと思いながら、スマホをポケットにしまう。

「どうしたの? 飲み会のお誘いかな?」

「あ、うん……まあ……」

 ユウマが曖昧に答えると、ヒナは少しだけ表情を曇らせた。

「そっか……また男の子だけの飲み会? 女の子もいる飲み会だったりして?」

「え、うん……そうみたい……だけど……」

 いつもは、男子ばかりの飲み会だったが、今回は女子が混ざっているみたい。

 ユウマが不思議に思っていると、ヒナは突然、ユウマの腕から手を離し、少しだけ距離を取った。そして、今まで見たことのない、どこか寂しそうな表情でユウマを見つめた。

「そっか……じゃあ、気をつけて帰ってね」

 いつもなら、もっと楽しそうに「じゃあ、またねーっ! 早く帰るんだよー」と手を振ってくれるはずなのに。その日のヒナは、少しうつむき加減で、いつもの明るさは影を潜めていた。

 ユウマは、彼女のその表情に胸がざわつくのを感じた。いつも明るく、誰にでも優しいヒナが、こんな顔をするなんて。

「どうしたの?」と尋ねようとしたその時、ヒナはもう一度顔を上げて、無理に笑顔を作った。

「じゃあね! また明日ね……」

 そう言って、彼女はくるりと背を向けて走り去っていった。ユウマは、ヒナの後ろ姿が遠ざかるのを見つめながら、違和感を拭いきれずにいた。いつもの彼女とは違う、どこか無理をしているような笑顔。その笑顔の裏に隠された、彼女の本当の気持ちが知りたかった。

 心配になった俺は、ヒナの後を追いかけた。足早に進むヒナの背中が、どこか小さく見えた。途中で公園を見かけ、ふと視線をやると、ベンチに一人で俯いているヒナのような姿を見つけた。街灯の淡い光が、彼女の肩をそっと照らしている。

「ヒナ……?」

 思わず、その名を口にしていた。一歩、また一歩と、心臓の鼓動が早まるのを感じながら近づく。普段、人違いだと困るので外では基本声をかけないのだが、今のヒナからは、放っておけないような、微かなSOSが感じられた。

「……え? ユウマくん!? あれ? 飲み会は?」

 顔を上げたヒナは、驚きに目を見開き、その瞳をキラリとうるませて俺を見つめてきた。街灯の光を反射して、まるで宝石のように輝く瞳。その視線が、俺の胸の奥をぎゅっと締め付ける。

 あれ? いつもと違う雰囲気……やっぱり何かあったのかな? 普段の快活なヒナとは違う、どこか頼りなげな表情に、俺の心はざわめいた。

「それより……どうしたの? なにかあった?」

 原因は明らかに俺なわけないよな……何もしていないし、傷つけるような踏み込んだ会話もした記憶ないし。そんな考えが頭をよぎる。俺は心配そうな顔でヒナの顔を覗き込んだ。その距離は、あと少しで触れられそうなほどに近かった。ヒナの吐息が、微かに俺の頬を撫でる。その瞬間、俺の指先が、ほんの少し震えた。

「え? わ、もしかして……わたしが心配で追いかけてきてくれたとか……?」

 ヒナが驚いた顔をして聞き返してきた。その表情には、驚きと同時に、どこか嬉しそうな色が混じっているように見えた。街灯の光が、彼女の瞳の中で揺らめいている。

 「……え? ま、まあ、あんな顔をして……走っていかれたら心配するよ」

 俺は俯きながら、蚊の鳴くような声で答えた。可愛いヒナに、そんな真っ直ぐな視線で見つめられていたら、恥ずかしくて顔を見て話すなんて無理だ。心臓がドクドクと、うるさいほどに高鳴る。

 俺の言葉を聞いたヒナは、ふわりと笑みを広げた。まるで花が咲くように、その表情は明るくなる。そして、嬉しそうに顔を近づけて、ニヤニヤとした顔で俺の顔を覗き込んできた。甘い花の香りが、ふわりと鼻腔をくすぐる。

 「え、わっ。なに? ち、近いってっ!」

 思わず、俺は慌てて距離を取った。一歩、二歩と後ずさる俺に、ヒナは小悪魔的な笑みを浮かべたまま、さらに一歩、二歩と詰め寄ってくる。その距離は、先ほどよりも、ずっと近くなっていた。俺の視界には、ヒナの潤んだ瞳が、いっぱいに広がっていた。

「なんで逃げんのよぉー!? ユウくーん」

 その声に、俺は思わず一瞬足を止めた。は? 呼び方変わってるし! その呼び名というか、あだ名は小学校の時に呼ばれてた以来呼ばれてなかった。何が起きたんだよぉぉ!? 心臓がドクン、と大きく跳ねる。背中にヒナの視線が突き刺さるような錯覚に陥った。

 日が落ちて、公園の周囲はすっかり暗闇に包まれていた。代わりに、いくつもの街灯が次々と光を灯し、オレンジ色の淡い光が地面を照らし出す。そんな中を、二人の男女、しかも可愛らしい女の子に追いかけられている俺。これが逆だったら、間違いなく警察が駆けつけている事案だろう。俺の脳裏には、そんな妙な思考がよぎった。背後からは、ヒナの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

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